Friday, August 16, 2013

Literary Persuits

昔の恋がなつかしいので 遠い薔薇を私は思う。 
うなだれた青い前額の そのかみの日の情熱。 
忘却の上に流れる ほのかな匂いの幽霊たち。 
昔の恋がなつかしいので 遠い薔薇を私は思う。 

 堀口大學「遠い薔薇」



小さな船に乗せられて、大きな海原にぽとんと落とされてしまうことになって、
食料とお水以外で何かひとつだけ好きなものを持っていっていいよと言われたら、
私は堀口大學の「月下の一群」を持っていくかもしれない。

〜〜〜

堀口大學の「月下の一群」は春頃に講談社から新装版が出ると知り、
母に頼んで送ってもらったものです。
フランス文学の翻訳者と言えば堀口氏ですが、
私も彼の翻訳がとても好きです。
「月下」には66人のフランス人作家の作品が340編納められています。
諭されるような詩、寄り添ってくれるような詩、愛の詩、憎しみの詩、別れの詩。
ただ悲しくなるようなものもあれば、声に出して読みたくなるもの。
頭の中で反芻してしまうもの・・・
いっぺんに読んでしまうのがもったいなくて、
自分の心のステイとが安定したときに、少しずつページを捲っています。
知っている詩やはじめての作家の作品といろいろありますが、
ここでもいくつか紹介していけたらなと思います。

上の詩は堀口氏本人の残した詩で、「月下」には載っていないのですが、
薔薇を「そうび」と読んだりするところもシャレていていいなあって思います。