Sunday, October 16, 2011

Home


夢から覚めて目を開けると、影がかかった白い天井に驚くことがある。
一緒に暮らしはじめて6年は経つというのに、
朝起きて言葉を交わす相手が主人だけだということに、
違和感のようなものを感じるときがある。
流れているはずのクラシックの音楽や、階段を下りて香るお味噌のにおいが、ない。
夕ごはんを食べながらふと顔を上げると、目に映るのが主人の顔だけで驚くことがある。
静かすぎる夜が、ふと居心地悪く感じることがある。
ブワーッと道路を駆け抜ける単車の音や、窓辺に座って眺める土手の景色も、ない。
朝起きて椅子に座ると、母が作ってくれた朝ごはんがテーブルの上に出されたり、
父と弟が裏のドアから出かけて行く姿を見送ったり、
妹と夜遅くまで下らないことで笑ったり、
「ちょっとそこまで」と近くのコンビニまでサンダルで歩いたり、
畑の様子を見ている祖父に「行ってきます」と声をかけたり。
そういうこともない。
母が掃除機をかけたり食器を洗ったりする雑音、
大きな声で言い争う妹と弟の声、テールライトやネオンの光、
湿気あふれる空気、タバコの煙、たくさんのヒールの音、店裏の汚れた路地のにおい。
どれもこれも私が忘れていたもの。
そして懐かしいはずなのに、なんだか新鮮に感じること。
目新しいことは、お風呂から上がると主人が母と海外ドラマを一緒に見ている姿や、
父と一緒にビールを飲んでいる姿。



今、東京の実家にいます。
まじめ顔の父の親父ギャグを聞いて、母の作ってくれたごはんを食べて、
妹の運転する車に乗って、大きくなった弟の姿を眺めながら、
主人と私が育った町を歩いています。
主人は2週間滞在の予定なのでもうすぐカナダへ帰るけれど、
私はしばらく東京の実家でのんびりすることにします。
日本でもたくさん更新する予定なので、どうぞ遊びにきて下さい。