Saturday, April 13, 2013

Every Rose Has Its Thorn

「本当にバラは棘まで美しいですね」 
「本当に、人間の欠点も美しい時がありますわね。私、そんなことをふと考えたのです」
 「バラには棘が必要なのですよ。あなたにだって棘は必要ですが」 
「私に棘がありまして」
 「なさすぎるのです」 
「私に棘がないのですって」 
「あります。あります。ありすぎます」

 武者小路実篤「棘まで美し」より抜粋 (新潮文庫P.157)


読みかけだった残りの半分をお風呂に入りながら読んでいたら、
 最後の最後で切なくて涙が出てしまいました。 
そして、この本を十代の時に読んでいなくてよかったな、と思いました。
 読んでいると先が読めてしまうプロットで、
たぶんどこにでもありそうな3角関係を描いた 武者小路実篤の「友情」。 
小説は読んでいるとどうしても主人公に感情移入してしまうので、 
お話の全体像を主観的に見る傾向があります。 
だから読み終えたばかりのときは、主人公が可哀想で。 
でもよく考えてみると、主人公のひとりよがりや、親友の気持ちが思い出されて。 
私は好きな人を友人と取り合った経験はないけれど、
 実際自分が主人公だったら、親友だったら、
ヒロインの立場だったら…と想像してみたら、 
その3人はそれぞれに強い人なのだなぁと気付きました。 
でもきっと十代の頃だったら、主人公が可哀想だな〜と思っただけで、 
それ以上に考えることはできなかったんじゃないかな。 
 「友情」では、人が恋するときに落ちやすい「思い込みと相手の美化」、 
そして、親友と愛する女性のどちらを取るかに悩む人間の心情が 
とても上手に描かれていると思います。 


武者小路実篤の作品をはじめて読んだのは2年前と最近で、
「棘まで美し」という作品でした。

「棘より美し」は「友情」とプロットが似ていますが、
決定的に違うのは主人公とヒロインの未来です。
どう表現していいか分からないけれど、
気付いたら、フワフワのブランケットに包まれていた、みたいな感覚。
読み終えて、素直にいいなぁと思いました。


"友達と話しして、 
話しがはずんで来て、 
二人の心が、 
ぴったり、ぴったり、あって、 
自づと涙ぐむとき、 
人は何者かにふれるのだ、
 何者かに。" 

 武者小路実篤「友達の喜び」


 志賀直哉や岸田劉生らと親交が深かったという武者小路実篤。 
「友達の喜び」はそんな彼が、友情について綴った詩のひとつです。
 調布にある武者小路実篤の資料館のホームページにこの詩が載っていました。 
無料でダウンロードできる資料もたくさんあります。 
他にも友達への思いを綴った詩が載っていて、それらを読んでいると、
 作者が「友情」でいいたかったことの意味がよくわかる気がします。
 言葉遣いが美しくて、素朴感のある、でもどこか抽象的な描写のもの。 
そんなお話が好きです。 
それを求めると古典文学が多くなるのですが、
とくに昭和前期の文学には 教えられるこのがすごく多くて、
この時代にの作品にもっと触れたいなぁと思うのです。
 次は是非「愛と死」を読んでみたい。 

 〜〜〜 

白檀(佐曾羅)を炷きました。 
精油のサンダルウッド(白檀)とはまったく異なる香りですが、 
力強さが秘められたラブストーリーのような趣です。


二井三「白檀 刻」