Saturday, November 3, 2012

Lost in Dreams


日本へ来てそろそろ2週間。
先週から実家の暖炉には火が灯りはじめました。
さむい、さむい。


父が今年後期の美術展リストをくれたので、
その中からまずは国立新美術館で行われている
「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」へ行ってみました。
電車などの広告で見て、行きたいなあと思っていたのです。

今回日本ではじめて公開されたリヒテンシュタイン家のコレクション。
私は名号などに詳しくないのでよくわからないのですが、
ハプスブルク家の家臣だったリヒテンシュタイン家が1608年に「侯」の爵位を、
さらには1719年にローマ法王によって自治権を与えられたことにより、
リヒテンシュタイン公国という小さな国が成立したそうです。
工芸品にはキャビネットやチェアをはじめとするバロック調の家具、
大きなタペストリーや中国の影響が色濃く反映されているシノワズリーなデザイン、
300年近く前のマイセンの陶磁器など、
興味深いものがたくさん。
絵画にはラファエロやヴァンダイクの他に、ルーベンスやレンブラント。
 中にはリヒテンシュタインの敷地の景観図の彫版もありました。


目を惹くものはたくさんあったけれど、
一番いいなあと思ったのはフリードリヒ・フォン・アメリングの
「夢に浸って」でした。
美術館では作品を遠くから眺めるのが好きなのですが
この作品は何度も近くに寄って見入ってしまったほどです。
絵の前を行ったり来たり、ベンチに座って眺めたり・・・
本を手に物語の中へ入り込んでしまった女性を描いたこの作品のモデルは
アメリングのお気に入りだったという女性です。
私も本を読みながら物思いにふけるのが大得意で、
子どものころから特技は「妄想」することだったので、
この絵の女性がどこか自分に似ているような気がして、何の本を読んでいるのか、
どんな夢を見ているのか、
気になって彼女といろいろお話ししたくなりました。


絵からは声は聞こえないけれど、
モデルの表情や視線からたくさんのイメージを想像します。
日本の美術館はいつも人が多いので、
自分の気に入った絵とゆっくり語り合うことがなかなかできないけれど、
そういう時間を少しでも持てるのが好きなので、
やっぱり画集などで見るよりも本物を見るのが楽しいです。

見終えたあと、外の席に座ってコーヒーを飲んでいたら、
空が少しずつオレンジ色に染まっていきました。
いい音楽を聴いたり、素敵な香りを聞いたり、気に入った絵に見入ったあとは
お天気が悪くても、震えるくらい寒くても、混み混みの電車で窒息寸前になりそうでも、
やっぱり足取りが軽くなります。

主人が来たら、こんどは一緒に印象派を見に行きたいと思います。