Tuesday, November 20, 2012

Japanese Beautyberry

“小さなかわいい実を取って帰りました。 
お母さんが「ムラサキシキブだよ」と教えてくれました。
 私はガラスの瓶に入れて、きれいだなあと眺めました。” 


 英語ではJapanese Beautyberry、学名はCallicarpa japonica。 
直訳すると「日本の美しい実」、
紫式部は日本特有の植物だそうです。 
親戚のお庭にひっそりと咲いていたもので、
葉っぱは枯れかけていたので捥いでしまいました。

 小学校のときに書いた詩が、2年連続で市の詩集に載ったことがありました。 
上記の詩は1年生の時のもので、 
祖父母の庭先で紫式部をはじめて見たときのことを書いたのです。 
上は漢字に変換しているけれど、実際はひらがなとカタカナのみの短い詩。 
掌に乗せたツブツブは、
まるでアメジストのようでとてもキレイでした。 
母からはお花や植物の名前をたくさん教えてもらったけれど、 
これだけはきっと、これからもずっと忘れられない植物。
今でも大好きです。

Thursday, November 8, 2012

Serenity


澄み切った青空が広がった木曜日、 
各駅停車の電車に乗ってゆっくりと鵠沼海岸へ出かけました。 
通勤ラッシュを過ぎてからの各駅電車は気持ちがいいほど空いていて、
読書をしながらウトウト。 
昔ながらの商店街が残る小さな駅を降り、習い事先の先生と合流し、
和食ランチを食べに行きました。
 いつもお会いするときの先生はお着物なので、
スタイリッシュなお洋服の先生が新鮮で素敵。 
気さくで楽しくて、お師匠様なのにお友達のように接して下さるのです。 
レストランに向かう間、住宅街の中を先生の車で走っていると、
目の前には富士山が見えかくれ。 
午後は曇って見えなくなってしまったけれど、青空に映えるきれいな富士山でした。 


ランチのあとは海岸へ。
大好きな湘南海岸、
ここの海は波の先がまるでオートクチュールのレースのよう。
波が引いたあとに残された砂がいつもキラキラ光っていて、
 小さなダイヤモンドがばらまかれているみたいなのです。
カナダの海も素敵だけど、やっぱり違う。


 芥川龍之介の「蜃気楼」で主人公が友人たちと蜃気楼を見に行くのは鵠沼でしたが、
茅ヶ崎や大磯に向かって走る海岸線は、
 七里ガ浜や稲村ケ崎の左側とはまったく雰囲気が違います。
 蜃気楼は見えなかったけれど、
水平線を背にサーファーの姿を見ることができました。
この姿を見ると、日本に帰って来たなあと思います。
ところで子どもの頃、海水浴といえば湘南だったのですが、
 七里や由比ヶ浜のほうがなじみがあっても、
今回歩いた鵠沼から辻堂の海岸はたぶんはじめて行きました。

そのあとも辻堂の海浜公園内をお散歩し、クロマツの並木を見上げました。
この地域は戦後米軍海軍の演習所となっていたそうで、
 先生が子どもの頃はヘリコプターの発着なども見ることができたそうです。
それが今では大きくきれいな公園になっていて、大人も子供もたくさん遊んでいました。 
 夕方は134号線を鎌倉方面にドライブし、
鎌倉山を抜けて藤沢でお茶してから帰りました。
 鎌倉山では夕日が沈んだあとのサーモンピンクの空と相模湾が見え、
それがとてもきれいで、しばらく脳裏から離れそうにありませんでした。

Saturday, November 3, 2012

Lost in Dreams


日本へ来てそろそろ2週間。
先週から実家の暖炉には火が灯りはじめました。
さむい、さむい。


父が今年後期の美術展リストをくれたので、
その中からまずは国立新美術館で行われている
「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」へ行ってみました。
電車などの広告で見て、行きたいなあと思っていたのです。

今回日本ではじめて公開されたリヒテンシュタイン家のコレクション。
私は名号などに詳しくないのでよくわからないのですが、
ハプスブルク家の家臣だったリヒテンシュタイン家が1608年に「侯」の爵位を、
さらには1719年にローマ法王によって自治権を与えられたことにより、
リヒテンシュタイン公国という小さな国が成立したそうです。
工芸品にはキャビネットやチェアをはじめとするバロック調の家具、
大きなタペストリーや中国の影響が色濃く反映されているシノワズリーなデザイン、
300年近く前のマイセンの陶磁器など、
興味深いものがたくさん。
絵画にはラファエロやヴァンダイクの他に、ルーベンスやレンブラント。
 中にはリヒテンシュタインの敷地の景観図の彫版もありました。


目を惹くものはたくさんあったけれど、
一番いいなあと思ったのはフリードリヒ・フォン・アメリングの
「夢に浸って」でした。
美術館では作品を遠くから眺めるのが好きなのですが
この作品は何度も近くに寄って見入ってしまったほどです。
絵の前を行ったり来たり、ベンチに座って眺めたり・・・
本を手に物語の中へ入り込んでしまった女性を描いたこの作品のモデルは
アメリングのお気に入りだったという女性です。
私も本を読みながら物思いにふけるのが大得意で、
子どものころから特技は「妄想」することだったので、
この絵の女性がどこか自分に似ているような気がして、何の本を読んでいるのか、
どんな夢を見ているのか、
気になって彼女といろいろお話ししたくなりました。


絵からは声は聞こえないけれど、
モデルの表情や視線からたくさんのイメージを想像します。
日本の美術館はいつも人が多いので、
自分の気に入った絵とゆっくり語り合うことがなかなかできないけれど、
そういう時間を少しでも持てるのが好きなので、
やっぱり画集などで見るよりも本物を見るのが楽しいです。

見終えたあと、外の席に座ってコーヒーを飲んでいたら、
空が少しずつオレンジ色に染まっていきました。
いい音楽を聴いたり、素敵な香りを聞いたり、気に入った絵に見入ったあとは
お天気が悪くても、震えるくらい寒くても、混み混みの電車で窒息寸前になりそうでも、
やっぱり足取りが軽くなります。

主人が来たら、こんどは一緒に印象派を見に行きたいと思います。