海外に住んでいてもいなくても、
物語の中に自分の身近な場所が登場すると嬉しいものです。
最近好きでよく読む角田光代さんの作品には、私が暮らした町がときどき、
ほんの一瞬現れることがあって、妙に楽しくなります。
またコートランド・ブライアンの「偉大なるデスリフ (村上春樹翻訳) 」では、
ローマに滞在している登場人物が歩く舞台が、
去年主人と訪れたところばかりで、
れまたやけに親近感が湧きました。
カナダに来る前は、カナダ文学といえば「赤毛のアン」だったけれど、
ここに住むようになっても「赤毛のアン」のまま。
大学で文学のクラスをとっても、
これといって心を動かされるものとは出会いませんでした。
でもある日、
初めて読むのにとてつもない親近感を抱かせてくれる作品に出会ったのです。
それがアリス・マンローという女性の短編でした。
「日常」。
これが彼女の描く世界。
カナダに移って結婚して、少しずつ、でも確実に、
この国が私にも染み付いてきた(はず)。
だから分かることもあるのだろうけれど、
ドラマティックなこともなく、特別なこともない。
でもすごーく理解出来る登場人物の気持ち。
主人公たちが自分の周りの誰かと似ていて、
ついつい感情移入してしまいそうにもなるけれど、そんな感じもいいのです。
面白い文学とはこういうものをいうのだろうな。
I love the world of Alice Munro.