“二人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい
立派過ぎないほうがいい
立派過ぎることは 長持ちしないことだと 気づいているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい 完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうち どちらかが ふざけているほうがいい ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても 難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと 気づいているほうがいい
立派でありたいとか 正しくありたいとかいう
無理な緊張には色目を使わず
ゆったりゆたかに 光を浴びているほうがいい
健康で風に吹かれながら 生きていることのなつかしさに ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そしてなぜ 胸が熱くなるのか
黙っていてもふたりには わかるのであってほしい”
吉野宏 『 祝 婚 歌 』
「I was born」で有名な吉野宏さんの、結婚を祝う詩です。
完璧を求めないように。
優しさを忘れないように。
怒りがあふれそうになったら、一度目をとじて深呼吸するように。
勝手に悲劇の主人公にならないように。
疲れているときもあるしひとりになりたいときもあるけれど、
それでも笑顔を見せてあげられるよう強くなれるように。
自分を飾らなくていい、そんな相手であるのなら、
それは砂場の中からダイヤモンドを見つけたようなもの。
1年先、10年先、50年先。
この詩のような夫婦でいられますように。